怖くない怪談

 今から十年以上前の話。当時私は一人暮らしをしていた。朝は出勤時間に合わせたアラームで起きる。当時は毎晩酒を飲んでいたせいで毎朝寝起きは悪かった。

アラームが鳴るとスヌーズボタンを押してウトウトする。束の間の快楽である。たまに、ごくたま~に一度目のアラームで覚醒してスヌーズではなく停止ボタンを押す時があった。すぐに起き上がり支度に入れば問題ないのだが「何着ようかな~」とか「朝ごはん何食べよ⭐︎」などと布団の中でウダウダ考えてると十中八九二度寝する。これは日常に潜む罠である。誰が何のためにとかはわからんが罠。決して寝起きの自分を信じてはいけない。

ある日の朝、例によってこの罠に引っ掛かってしまった。停止ボタンを押した私は布団の中で夢とうつつを彷徨っていた。と、その時ふいに肩を叩かれた。うつ伏せに寝る私の肩を何者かが叩いたのだ。「誰っ!?」いっきに現実に引き戻された。飛び起き振り返るがもちろん誰もいない。叩かれた感触はリアル。手のひらで叩かれた感じではなく、親指を除く四本の指先でトントンと叩く感じ。爪が当たるみたいな。何?誰?疑問はあるが怖さはなかった。だって起こしてくれた。優しい~!守護霊様?ご先祖様?亡くなった身内?天使か?もしや未来の自分?想像や妄想は尽きない。



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